vol.29 車いす駐車場のおハナシ〜その3 「納得」を引き出す情報発信
「車いす駐車場は幅が命!」放送後…
かつて私が制作していたuhb北海道文化放送「石井ちゃんとゆく!」という番組で、「車いす駐車場は幅が命!」と題し放送したことがありました。
内容は…
車いす駐車場は、単に入り口に近いだけじゃなく、その幅にこそ意味がある。車いすで乗り降りする場合にドアを全開にしなければならないから…
というもので、
実際に、車いすドライバーさんがドアを全開にし、運転席→車いすに乗り移る様子を放送しました。
すると、放送の翌日、面白いことが起こりました。
それは、別番組のADさんが、私の姿を見て駆け寄ってきて…
「山田さん、オレ、前に、すげー疲れてた時に、車いす駐車場に止めちゃったことがありました。でも、昨日の放送を見て、もう、絶対に止めないって決めました。すんませんでした!」
と、言うと、そのADさんは、爽やかに去って行きました。
正直、名前も知らないADさんで、いきなりのことだったので、驚きました。
心の中で一人で反省したっていいものを、わざわざ告白し、懺悔まで…?
心からの納得が決意と行動を生む
が、しかし、なんと言いますか…
彼は、心から納得したような晴れやかオーラを放っていました。
一般的に倫理に訴える事柄は、時として「言わなくても分かっているよね」と、明確な理由が説明されていないことがあります。
きっと彼は、ぼんやりと
「車いす駐車場に止めては行けない」ことは知っていたのだと思います。が、明確に
「なぜ、健常者は止めてはいけないのか」は知らなかった…納得していなかったのだと思います。
車いす駐車場は、単に“入り口に近い”とだけと思っていたら、
疲れている時や身体がしんどい時などに止めたくなる誘惑にかられたり…
または、なぜ、障害がある人ばかりが優遇されるのかという、逆差別を受けているような心理に陥り、反倫理的な行動を取らせたりするのかもれません。
しかし、ぼんやりした「良心・倫理観」ではなく、心から納得できれば、人は理解し、しっかりした自制心を抱くことができるのだと、思えたエピソードでした。
そのADさんは、その後も
「お前、なんで車いす駐車場に止めちゃいけないか分かる?それは…」と、他のスタッフにも話してたそうです。
心からの納得は、以前、脳科学者の茂木健一郎さんがそれを「アハ体験」と、表現していたように、脳の中に一種の「快感」を生み出し、快感を感じた気づきは、人に話したくなるという波及効果もある。
福祉系の情報は時として、こうした「分かっているでしょう?」と、詳しい説明をはぶいていることも多いように思います。
一つでも多くの、そうした「納得」を引き出す情報発信をしたい!
ドライバー教習所で、そういうメッセージを出す機会はないものか…
(と、つぶやいてみる)
2019.8.19
◆一般的に倫理に訴える事柄は、時として「言わなくても分かっているよね」と、明確な理由が説明されていないことがあります。
だからルールが必要だと思うのです。ルールは判断基準です。
社会秩序を守るためのルールは必要です。社会秩序が守れてこそ「人にやさしい街づくり」が実現できるのだと思います。社会秩序が守れない者にはペナルティという方法も考える必要があるでしょう。
◆心から納得できれば、人は理解し、しっかりした自制心を抱くことができる
私は駐車場問題に取り組んで20年になります。もちろん啓発運動からスタートしました。歩行困難者が困っていますと訴えればすぐに理解してもらえると思っていました。山田さんも番組で、ほっとねっとの伊藤さんも店頭でのチラシ配布で、山形県南陽市の加藤さんも青色塗装で、車体に「私は停めません」というステッカーを貼る方法で訴えたNPOさんもありました。しかし、私たちの訴えはこのADさんのような一部の理解ある人たちの心には届いたかもしれませんが、社会全体の理解を得ることはできませんでした。人々のモラルもマナーも常識もそれぞれ違うのです。
半谷さま。
丁寧なメッセージをありがとうございます。
情報を扱うものとして、とにかく、どう伝えたら、どう表現したら良いかを考えて考えて考えて
伝え続けて参ります!