vol.43 ユニバーサルデザインな仮設住宅の必要性〜福島からの提言

北海道胆振東部地震から今日で1年

あの、前代未聞のブラックアウトを引き起こした、北海道胆振東部地震から今日で1年。

地震が発生した早朝の3時頃。札幌でも大きく揺れて、まもなく停電。私が住む地区に電気が復旧するまでに2日近くかかりました。(小樽の友人宅は4日以上!)

平和な日常は、当たり前にずっとあるものじゃないことを体感した貴重な経験となりました。

さて、昨日に引き続き「これからの仮設住宅への福島からの提言」(2012年3月発行)について。

これからの仮設住宅への福島からの提言 表紙

2011年10月から半年をかけて調査

この報告書は、福島県内7市町村10カ所の避難所を調査し、まとめられました。

大きく「プレハブ製」と「木造」に分け、構造や間取り、寸法、設備について調べたり、合わせて住民から直接話を聞いたり、アンケートを取ったりして、約1年を過ごしてみての感想(多くが問題点)を丁寧に聞き取り、まとめられています。

壁が薄いことによる音の問題や、断熱材が入っていないことによる暑さ・寒さ(後付けで施された所もあるようですが、十分ではない)、狭い、段差が多い、洗濯物を干す場所や収納がない、風呂に追い炊き機能がなく、冬は入っている間に水になる…など、やはり、「急ごしらえ」な空間ゆえの苦悩が溢れています。

そこでも住民は「ぜいたくは言っていられない」と、それぞれが工夫したり、助け合ったりしている様子も紹介されています。

最低限の快適を担保するユニバーサルデザイン仮設住宅モデル

調査にあたったNPO法人ユニバーサルデザイン・結(ゆい)は、代表の冨樫氏が一級建築士であり、また、メンバーの中に半身麻痺の障害がある人もいて、

等しく誰もが遭遇する災害に対する備えには

*最低限の快適さ

*年齢、性別、障害の有無などに関係なく使えるユニバーサルデザインの観点

が欠かせないのではないかと考察を立て調査を実施。

提言の結びに、調査で浮かび上がってきた数々の問題点について、

こうした作りにしておけば最低限回避できるだろう

“ユニバーサルデザイン仕様”の仮設住宅モデルを紹介しています。

それがこちら。

ユニバーサルデザイン仮設住宅モデル案

「こんな設置基準にするとUDに」

 

 

ポイントをいくつか紹介すると、

*〈入り口〉できれば屋根付きの共用廊下をつける(段差解消にもなる)

*〈台所〉流し台は調理スペースとなる1200mm幅のものにし、吊り戸棚を

*〈浴室〉洗面台は、浴槽の横につけず別に。追い炊き機能つき給湯器を

*〈居間〉押し入れを隣の家との間に設置。収納を確保し音漏れの防止にも

*〈床〉断熱効果のある畳にするか、床下に断熱材を最初から

どれも、それほど特別なことではなく、最初からこうしておくだけで、ただでもつらい避難生活に余計な苦悩をプラスせずに済む提案です。

大きな地震・前代未聞のブラックアウトを引き起こした胆振東部地震から1年の今日。改めて、いざという時の備えについて考えたいと思います。

2019.9.6

※この報告書について、調査にあたったNPO法人の副代表理事であり一級建築士の菅野真由美さんが2017年にWEB版「建築討論」に寄稿しているサイトを見つけました。↓(写真をクリックするとサイトへジャンプします)

WEB版「建築討論」2017冬

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