vol.67 「無言語コミュニケーション」体験

聞こえない両親の元に育った尾中さん

昨日、大阪を拠点に活躍している(株)サイレントボイス 代表 尾中友哉(おなか ともや)さんのお話を聞く機会を得た。

尾中友哉さん

(株)サイレントボイス代表 尾中友哉さん

 

尾中さんは、聴覚に障害がある“聞こえない”両親から生まれた“聞こえる”子供として育ち、私達が知らず知らずに日本語を話せるようになるのと同じように、手話を人生の第一言語として育った。

何がすごいって、“聞こえない”ことが当然の環境で育ったことで、尾中さんは言葉を介さず、相手の心、気持ち、意図、言いたいことを全身で感じ取る能力とセンスを身につけた人であること。

 

なにせ、赤ちゃんである尾中さんが泣いても、両親は振り向かない。(聞こえないから当然である)だから、0歳の時にすでに、「お腹がすいた!」と、表現するのに、必死に口を大きく開けてその口に向かって指を指すという“自作の手話”で話していた(祖母から聞いた)という。

サイレントボイスのサイト

サイレントボイスのサイト(クリックでジャンプ!)

聞こえずとも、愛情深く、何事にも積極的に取り組む両親の元で育った尾中さんは、優しさ、寛容さ、前向きさ、そしてチャレンジ精神を備えた青年へ成長し、大手広告代理店勤務を経て独立。

今、言語に頼らずに互いに理解しあう能力や関係性を引き出すコミュニケーション法

「無言語コミュニケーション」の大切さを伝えるため、

上司と部下、同僚同士など、職場の人間関係構築に様々な課題や問題を抱える企業に対し、ユニークな研修プログラムを提供している。

そのワークショップの一端を体験させて頂いた。

ネタばれになるので詳しくは書かないが、

要するに、人というものは、同じ言葉であっても、人によって捉え方や感じ方に違いがあり、その結果導き出される行動までが違ってくる……という事実を認識するワークを行い、その上で、

もっと「目を見る」「気持ちを慮る」「感じ取ろうと気持ちを働かせる」という

“無言語のコミュニケーション”を駆使・レベルアップすることで、より良質な関係を築く方向へと導く手法。

会場は、大人ながら、「え〜〜〜!」「まさか!」「ホントだ!」「うわ〜!」など、

子供のような向きだしの感情が表れ、笑い声にほぐされながらの、実に楽しい“気づき”を体験させて頂いた。

原点は両親の背中

今回は、滋賀県在住のご両親も一緒にいらしていた。

お母様は、持ち前の明るさ、バイタリティ、そして料理の腕を活かし、地元で喫茶店を経営なさっていて、その様子はNHKでも紹介され、反響を呼んだ。

NHKハートネットTVのサイト

お母様の幸恵さんを取材したNHKハートネット「壁があるから心がひらく ―ろう者が店主の喫茶店―」(クリックでサイトへジャンプ!)

お父様は、自分が行きたかったものの聞こえないことで断念せざるを得なかった滋賀県内屈指の憧れの進学校に息子である友哉さんが入学したことを喜び、通学用に買った自転車を、雨の日も綺麗に毎日磨いて学校に送り出してくれたという。

尾中さんは、

言葉が話せるからと言って伝わっているとは限らない。

むしろ、言葉に頼ることで、互いに相手の気持ちを察したり、理解しあうセンスを眠らせていませんか?

と問いかける。

尾中さんとご両親

「尾中さんとご両親@昨夜の懇親会」他の出席者の話をご両親に手話通訳する尾中さん。

元気で笑顔いっぱいの軽妙な語り口ながら、とても論理的に満場の聴衆を引き込む尾中さん。

ご両親と楽しそうに掛け合う様子も微笑ましく、心がほんわり温かくなる…学びの多い貴重な機会となりました。

(企画して下さったリペアサービスの富田社長、そして、関係者の皆様、ありがとうございました!)

「無言語コミュニケーション」は、これからのバリアフリー社会を作る、大きなヒントや切り口になる予感と魅力を強く感じた一時でした。

2019.10.10

 

 

 

 

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