“戦力掘り起こし”の課題を教えてくれたI.S君 vol.119

青年になったS君

15年程前に私が制作していた番組が十勝地方でロケをした時に、出演してくれた男の子がいました。

「課題」イメージ写真 緑の芝生の上にガラスの地球儀

カメラ兄さんさんbyPhotoAC

当時小学生だったその男の子I.S君は生まれながらの脳性麻痺で、子供用の車いすに乗っていました。

笑顔いっぱいでよくしゃべる明るい子で、通級という制度を使い普通学級にも通い、周囲の子供達は自然にS君の車いす介助を手伝い、友達もたくさんいました。

お母さんは、シングルマザー。小学生のS君のことを「Sさん」と呼び、大切に大切に育てていらっしゃいました。

以来、年賀状のやりとり程度でしたが、1年ほど前にラインでつながり、数ヶ月に一度電話で話すように。

成人した時には、ネクタイを送ってお祝いしました。

今、彼は、就労支援事業所に入所し、パソコンを使う軽作業のお仕事とリハビリメニューをこなす日々を送っています。

「何かやりがいを感じることを見つけたい」と声弾ませたS君

先日、電話で話した時のこと。S君は、半年前位に私が「テレワークで動画編集講座をしたいと思っている」と話したのを覚えていて、

「ボクもやってみたい」と言います。

私「お〜〜、S君もやる?やってみる?♫やってみるには、編集ソフトをパソコンにインストールしたり、webカメラ用意したりしてもらわなきゃならないけど、近くに手伝ってくれる人いるかな?」

S君は、「お母さんに相談してみる」と言います。

私「じゃあさ、今度お母さんとS君と私と3人で電話で話して作戦会議しようか。いつにする?」

(S君のお母さんとも手紙をやりとりしたことがあり、私の事をご存知)

S君「そうですね、今度の日曜日はどうでしょう?早速、お母さんに電話してみます。いや〜、ボクも、もう20歳過ぎて、何か自分ができる、やりがいのある仕事や見つけたいと思ってたんですよね〜」と、

声を弾ませて話し、お母さんに電話してからまた折り返しますと、一旦電話を切りました。

しかし、数分後、メッセージがラインで届きました。

「お母さんの協力は難しいです。ボクが楽しめるものなら良いよとのことでした。休みが一日しかないので難しいそうです。申し訳ございません」

ぺこり(絵文字)

たしかに、いくら、パソコンが扱えれば編集そのものができるとしても、システムを整えなければ叶いません。

自力で彼はそれができない以上、誰かの協力が必要不可欠であり、働くお母さんもS君も週1回しかない休みを、よく分からないシステムについてあれこれするのはハードルの高いことでした。

その後、(ZOOMで)講座を見学だけでもしてみない?感触つかむだけでもどお?と誘っても

「遠慮しときます」

「辞めときます」

という返事ばかり。

八雲病院では、そうしたシステム導入に詳しいOT(作業療法士)の先生がいらして、今回の動画講座が実現しました。

今後、眠れる戦力を掘り起こしてゆくには、そうしたシステムをいかにスムーズに、そしてストレスなく整えるか…課題に気づかせてもらいました。

まだまだ私には勉強しなければならないことだらけです。

いつか、そうした部分をカバーできる体制を整えて、もう一度S君を誘える日が来るのを目標に進んで行きます。

2020.1.29

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