全盲の友人と一緒に楽しんだファイターズ観戦 no.124
最近なかなかタイミングが合わないが、全盲の友人 重子さんとたまに飲みに行く。
重子さんは生まれつきの光も感じない全盲。
彼女は、盲ろうの人が通う大学を卒業した後、点字での一般大学の大学院受験を認めさせてパスし、高等盲学校の教職についた才媛で、新聞や著作で“見えない世界”を発信している。
「ヒトの得る情報の80%は視覚からと言われているけど、
そうすると、私は8割引きの世界に住んでいる訳でしょ?
これがバーゲンセールなら良いのね〜」
私は、毎回、彼女のこうした感性豊かでユーモア溢れるエピソードに圧倒されるのだ。
そんな二人でファイターズの試合を観戦しに行ったことがあった。
私「重子さん、ファイターズの試合観に行ったことあります?今度一緒に行きません?ビールを飲みながら…楽しいですよ!」
重子さん「行きたい行きたい!私が教えている生徒にもハマっている子がいて、先生一回行ってみなよ、楽しいよってすすめてくれるんだけど、なかなか機会がなくて。行ってみたいと思ってたのよ!」
重子さんと観戦しに行くことを母に話すと「見えない人が野球を見るの?見えないのに、楽しめるの?」と、不思議がりますが、何をおっしゃるウサギさん!
見えなくたって球場には、大勢のファンが一つになって応援する声、大音量の音楽に、かっこいい場内アナウンスなどなど、他にはない臨場感があるでしょう!
かくしてバスや地下鉄を乗り継ぎ、ドームにたどり着くと、試合を待ちかねるファンの間をすりぬけて球場に向かう道すがらから、重子レーダーはビンビン働く。
バス停から球場までの道では…
「みんな足早に球場に向かっているわね。たくさんの親子連れも来ているのね」
中に入ると…
「ひろい空間ね〜、音がまわる感じで広さが分かる」
スタジアム内に入ると…
「すごい迫力!!熱気を感じる。周りの人はなにを鳴らしているの?」
私は持参した応援グッズを手渡し、重子さんの手をとって、こんな風にリズムに合わせて叩くんですよ〜と指南。
試合運びは、ラジオ実況で聞くので、ノープログレム。
ファイターズがホームランで得点!!!!
私が重子さんのメガホンにタッチしながら喜ぶと、前後左右の人も同じように重子さんのにポンポンタッチし、一緒に喜ぶ。
冷たいビールも格別!
試合後は、またバスと地下鉄を乗り継いで帰り、家の最寄り駅にある居酒屋で再びその余韻を愉しんだ。
見えなかろうが、ヒトには未知のモノゴトを味わい愉しむ感性が備わっている。
「できない」と周囲が決めることで、あじわうチャンスが減ることがあったとしたら、それはとても悲しいことだ。
歳をとったから、足が悪いから、どこそこに障害があるから…と、
客や利用者が自身の状況によって、体験できる範囲が狭まってしまう構造だと、
超高齢社会をひた走る今、やがてそれは自分達にも返ってくるし、経済的損失にもなる。
多くの人を迎い入れる可能性を、建物や施設を創る前にコンセプトを決め考えることは、
未来の可能性を広げることに他ならない…と、思うのだ。
2020.2.17