vol.69 ユニバーサルデザイン〜奥深い決まり2
「ヒトは失敗する」を前提にした原則も
前回に引き続き、ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターが提唱しているユニバーサルデザイン7つの原則から…
今日は、後半の3つと、おまけのプラス1をご紹介します!
原則その⑤ できるだけ多くの人に対し「失敗に寛容であること」
例えば、パソコンやスマートフォンの機能に「取り消し」というのがあります。
直前に行った操作を取り消せる…というもので、ついうっかり必要なデータを消してしまったり、変更してしまった後でも前の段階に戻れる…
ヒトはミスをすることがある、間違いを犯すことがあることを前提に、「失敗が重大な事故に繋がらないよう」やりなおしがきくように設計しておくことです。
原則その⑥ できるだけ多くの人に対し「楽であること」
例えば、蛇口。かつて蛇口から水を出す場合は、手首でひねる必要がありましたが、昨今は、レバー式が普及していますね。
ひねるという動作は、手の不自由な人や手首をひねるのが困難な人、力の弱い子供やお年寄りにとって、難しい場合がありましたが、レバーを上げ下げするだけで出したり止めたりできる形状はまさに「多くの人にとって楽」ですよね。
ちなみに、レバー式は最近、水を出す時に上へ“上げ”、止める時に“下げる”のが主流になっています。
かつては逆でした。
変わるきっかけとなったのは阪神淡路大震災。
地震によって上からモノが落ちてきて、蛇口が下がって水が止まらなくなった…というが教訓となりました。
原則その⑦ できるだけ多くの人に対し「適当な広さがあること」
例えば、駅にある「広い改札口」。駅は大きな駅ほどラッシュ時などには、短時間に多くの人をさばく必要があるため、人一人通れる幅の改札がほとんどですが、
中に広めの改札を設けておくことで、車いすの人、ベビーカーを押す人(ベビーカーを押す人は多くの場合、おむつなどを入れる大きな荷物を持っています)、大きな旅行カバンを押す人など、
多くの人が通りやすいですね。
以上がユニバーサルデザイン7つの原則。
いかがでしたか?実は、知らず知らずの内に、「なんだか使い易い」と思う形が増えて来ていることに気づいたのではないでしょうか。
7つの原則にプラス1!
さて、ここで…かつて、私が担当していた番組では7つの原則にプレスしてもう一つ、
東海大学旭川校で公共デザインを教えていらした小河幸次教授(故人)が提唱した
とても重要なもう一つの原則をご紹介しました。
それは…
小河先生が考える原則その⑧ できるだけ多くの人に対し「無関心にならない心」
7つの原則は、モノや建物をデザイン・設計する時に、その目指すべきカタチの方向性を示したものでした。
そこに小河教授は、そうした方向を目指す心の持ちよう=基礎として、まずは、
出来るだけ多くの人に対し、どんな身体の状態なのか、どんな困り事があるのかについて、人への関心を失わない大切さを説かれました。
健常者ばかりがユーザーではないのです。
「7つの原則」に合わせ、いわば、この「心の原点」をユニバーサルデザインに必要なこととして覚えて頂けたら嬉しいです。
2019.10.14