vol.38 NG10回!?言葉運びって難しい〜!
やっかいな「〜ですけれども」
以前制作していたユニバーサルデザイン番組におけるロケ現場。
その日 出かけたのは日高は浦河町にある乗馬クラブ。ホースセラピー(乗馬療法)の取材でした。
ホースセラピストを養成する学校で、近くの障害者施設に通う体に障害がある人が先生となり、どのように馬の背に乗る手助けをするか、どのようなところに気をつけてセラピーを実施するかなど、実習を通した訓練の様子を取材していました。
その番組冒頭シーンの撮影でのこと。
柵で囲った馬場を、その障害当事者の先生が馬に乗って、学生さん達と一緒に一周してきてところに、リポーターさんがカメラ前に飛び込んできて…
「今日、私は、乗馬セラピーの学校にやってきました〜!馬に乗っている○○○さんは、障害がある方で、セラピーを教える先生役…」
というコメント。ベテランリポーターさんにしてみれば、いつもでしたら、一発OK!の簡単な撮影…のはずでした。
ところが…、馬が一周してきて…打ち合わせ通り、リポーターさんがカメラ前に飛び出し………
「私は今日、乗馬セラピーの学校にやってきましたよ〜!今、馬に乗っていらっしゃる○○○さんは、障害がある方なんですけれども、セラピーを教える先生役で…」
一聴すると、問題ないように聞こえるこのコメント。
人は、
「冷蔵庫にジュースあるけど 飲む?」
「沖縄に来ているんですが、今日は晴れの良い天気〜」など、
否定する意味合いではないところでも、“〜けれども”というつなぎ言葉をよく使いますよね。
リポーターさんもそのつもりでしたし、聞いていた私も一度はOKかと思いました。が、しかし………そこでふと気づきました。
これ、聴く人によっては、「障害があるくせに、先生役」と言っているように聞こえるのではないだろうか?と。
NG10回の果てにやっと…
言葉は超特急で駆け抜けていきます。一瞬で、そうした意味合いで捉えられてしまったら大変です!
そこで、リポーターさんに、理由を説明し、「“〜けれども”ではなく、“〜で”で、もう一回お願いします!」と、撮り直しすることに。
しかし、人の「口癖」というのはなかなかとれません。特に、勢いや元気さが求められるテレビリポーターさんには、使い慣れたフレーズです。
馬が馬場を一周してきて〜………はい!「今日、私は…〜〜〜けれども、あ!すみません、もう一回お願いします!」……あ、もう一回!もう一周後に決めましょう〜!もう一回!……と、
結局、なんと、10回NGを出し(中には、カラスがタイミング悪く近くでガァ〜と鳴いたなんてのもありましたが)、11回目にしてやっとOKとなりました。(11周お付き合い頂いた皆さん…ありがとうございました…。)
事ほど左様に、テレビ制作では、特に言葉のニュアンスには毎回神経をとがらせていました。
時に言葉はその使い方で、違った意味合いで相手の心に届いてしまうことがありますよ〜…というエピソードでした。
2019.8.30