vol.5【「障害者」と「障害がある人」】

テレビで使いたくなかった「障害者」という言葉

テレビ番組は、言わずもがな時間が限られているだけに、表示する文字数はできるだけ短いのが理想です。ですから、テレビ制作に携わる全国のディレクター達は、日々限りなく文章を短く短く短く…する努力を繰り返しています(ご苦労さまです)。

特に私が13年間作っていたユニバーサルデザインPR番組uhb「石井ちゃんとゆく!」は、2分のミニ番組。使える文字数は非常に限られていました。

 

一般的に、身体に不自由がある人を「障害者」と呼びます。

この「〜者」という呼称…

「労働者」「学者」「影武者」「指導者」「挑戦者」「第三者」などなど、何をしている人か、どんな職業の人か、どのような立ち位置にいる人かについて端的に表現するのに便利な言葉ですが、しかし、

私は、番組テロップでは「障害者」ではなく、「障害がある人」と表記していました。

半ば意地で「障害者」という言葉は使いたくありませんでした。

それは、“身体の一部に障害がある人”という意味をはるかに越えて、まるで“別の国の人”とでもいうような、とてもかけ離れたところに追いやる強い疎外感を含んだニュアンスがあるように思えてならなかったからです。

 

障害物が“障害者”を作る

私にそう思わせたのは、様々な“障害がある人”との出逢いがあったからです。

☆全盲ながら、揚げ物、煮物なんでもこなす料理の達人

☆耳がきこえなくとも、迫力あふれる和太鼓演奏をする人

☆常時ベッド式の車いすに仰臥し、人工呼吸器をつけて生活しながら、他の障害がある人の生活をささえる事業所を運営している人。

☆徐々に筋力が失われてく病気ながら、悲観せず、法律の専門家 行政書士として電動車いすでバリバリ活躍している人

テレビ取材だから、特別な“障害者”にばかり出会ったんでしょ?と思うかもしれません。また、すごい“障害者”との出逢いを自慢したい訳でも、スーパー“障害者”だけをもてはやしたいのでもありません。

障害という条件的なマイナスを抱えながら、人生を前に進めている人々は、ゼロベースから出発する“健常者”よりよりスゴイ人達ではないかと思うのです。

「障害物が障害者を作る」という言葉があります。(←こういう場合には使います)

物理的障害物はもちろんですが、障害がある人への偏見や心の壁など、心理的障害物を取り除いてゆきたいです。

2019.7.17

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vol.5【「障害者」と「障害がある人」】” に対して2件のコメントがあります。

  1. 須貝久吉 より:

    素晴らしい考え方ですね。障害の方が健常者五感で感じるより、五感+六感能力を発揮している姿に目の見えない人が絵が描けたらとの思いから、立体的な触る絵を感じてもらい、それを頭の中にキャンバスを描き、紙に色を落としていく、それには視覚障害の方に色を落とした場所が分かるように、点字スケールも作成しました。多分描く方は最初は抽象画的な描き方かもしれませんが、健常者にない優れた絵画が生まれると信じて活動しています。どうか素晴らしい会社を立ち上げられたので、是非とも成功を祈っています。

    1. barrierfreefront より:

      須貝さま。コメントをありがとうございます!須貝さんも素敵な活動をなさっておられますね。昨日(7月17日)のコラムにも書かせて頂きましたが「障害」は部分であって、全体ではありません。皆さん、障害がある部分をカバーするために様々な工夫や努力をしていらっしゃいます。できないことばかりに焦点をあててその人を見るのではなく、出来る部分に大いに目を向け、出来るようになる力や方法を探す…共にそんな伴走者でありたいですね。

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