vol.32 東京パラリンピックまであと1年
2012年「奇跡の大会」といわれたロンドンパラリンピック
2020年8月25日に開幕する「東京パラリンピック」まで、あと1年となりました。
私が福祉系の取材を始めた20年ほど前は、障害者スポーツをテレビで取り上げることはほとんどなく、あってもニュース番組のスポーツ枠とは違う、「障害がありながらも頑張ってる」的心温まる話題としての扱いでした。
ですから、今、「東京オリンピック・パラリンピック」と、並記した呼称で呼び、当たり前にスポーツ枠で取り上げられるようになったことは、感慨深いものがあります。
そうした機運への変化を大きく感じたのは、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピック。
パラリンピック競技すべてのチケットを完売させた奇跡の大会として、まさにエポックメイキングな大会でした。
ぶれなかった“機運の醸成”
開催国のイギリスでは、開催前から、パラスポーツに親しむイベントを行ったり、なにより、パラリンピック競技に抱くイメージを…
「リハビリの延長」から「スポーツ」へ、そして…
「頑張っている障害者」から「トップアスリート」へ、
選手達もロンドン市民もすべての人の意識を変える取り組みをした結果であったということを、ロンドンパラリンピックの統括ディレクターを努めたクリス・ホームズ氏のインタビュー記事で読み、なるほど…と思いました。
要するに、パラスポーツも、スポーツ本来の魅力である「格好いい!」「すごい!」という感動を呼び起こす、ハイレベルな競技であることを伝え、さらに、不自由というハンデを乗り越える彼ら・彼女らこそヒーロー・ヒロインである…といった、偏見・同情ではなく、高揚感と共感を呼ぶ土壌作りをした関係者の“ぶれない”努力がもたらした結果だったという訳です。
今、NHKをはじめ、大手のメディアが、「純粋なスポーツ」「優れたアスリート」として取材・紹介し、大企業のCMにパラアスリートを起用したりと、日本でも、東京パラにむけた機運の醸成が行われています。
以前、車いすラグビー日本代表の池崎大輔さんと一緒にお仕事をした時、
激しい練習で転倒し、左手の親指の付け根がばっくり裂けて血が噴き出し、骨まで見えた……!?!?
という、痛〜〜い話をなんとも楽しそう〜に話す姿を見て、
「アスリートってホントに!!!」と、笑いながらあきれてしまいました。
障害があろうがなかろうが、やんちゃな気持ちと強い向上心をもって、練習とレベルアップに挑む姿は、オリンピックもパラリンピックもない、同じアスリートなのだと思いました。
日本選手のヒーロー・ヒロイン達の躍動を来年見届け、さらに、その先において、機運が逆戻りしないよう注目しつづけて行きたいと思います。
2019.8.22
参考記事:
講談社「東京パラリンピックを大成功させるには、この「奇跡」に学べ」(2017.5.17)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51742