vol.42 「仮設住宅への福島からの提言」〜胆振東部地震から1年
2年は短い 仮設住宅に入居できる期間
昨日の北海道新聞朝刊に、「仮設延長49%希望」という見出しの記事が掲載されていました。
胆振東部地震で被災し、現在、厚真、安平、むかわ3町が設置した仮設住宅に入居している人々へのアンケート(回答60戸)から見えてきた声を紹介したもので、2年という短い入居期限内では先の見通しが立てられないという厳しい現状と将来への不安の声が多数紹介されていました。
その記事を読んで、かつて、東日本大震災で、地震・津波のみならず、原発事故によって6万を超える仮設住宅が必要となった福島県が、被災1年後に行った同様のアンケート調査と、それに基づいて発信された報告書を思い出しました。
それは『これからの仮設住宅への福島からの提言』という、福島県が地元のNPOなどと協力してまとめたものです。
実は、2012年に発行されたその報告書でも、厚真・安平・むかわ町と全く同じ声がすでに報告されていました。
その報告書は、主に「家」としての機能性についてまとめられていました。
そもそも、仮設住宅は「短期入居」を前提として作られているので、被災当初、体育館などで寝泊まりしていたところから考えると、個別にトイレや風呂までついた仮設住宅は、なんとも有り難い存在ながら、季節をまたいで1年を過ごす内、様々な問題点が浮き彫りになりました。
「底冷えする寒さが耐えがたい」「サウナのような部屋」「隣の音や声が気になって眠れない」「すぐ壊れる」「隙間風がひどい」「設計する人は一度実際に住んでみたらいい。問題点に気づけるから」「質の悪い仮設住宅はすでに人災だ」
中には、優先的に入った高齢者の初期の仮設住宅は段差がひどく、後から改善がほどこされたバリアフリーに近い仮設に、若く元気な人が入居するというミスマッチも起きました。(冒頭の写真の段差をご覧下さい)
活かされていない「声」
何を言いたいのかというと、同じ問題点は、2012年の時点で福島からすでに発信されていたということです。今から7年も前です。
報告書をまとめた地元のNPO法人ユニバーサルデザイン・結(ゆい)代表で一級建築士の冨樫さんに、かつて番組でインタビューした時、
「福島での経験を基に、将来起こる災害に備えてほしい。同じ思いを他の人々がしないように活かしてほしい」と、おっしゃっていました。
すでに、2年という入居期間は短すぎることが福島の災害時点で、明らかになっていました。
いまだ復興の道筋さえ見えていなかった被災後1年の福島から発信されていたこの提言をあらためて見る時、自分達の苦しく辛い、肌で感じている現状を記録し、後世に残そうとして下さった無数の声が、今の災害に活かされていないことに、とても残念な気持ちになります。
実は、その提言書には、「仮設住宅」を「復興住宅」へ転用できる…長期間暮らすのに耐えられる作りにあらかじめしておくべきではないか?といった構造に関する提案もなされています。
それは、“最低限の快適さ”を確保したユニバーサルデザインに配慮した具体的な仮設住宅モデルです。
明日はそのことをご紹介したいと思います。
2019.9.5