vol.48 身体に合わせた究極の車作り〜 十勝の(有)イフ
帯広に福祉車両の職人あり!
札幌から車で約3時間(高速道路経由)。今、放送されている大人気の朝ドラ「なつぞら」の舞台としても登場する十勝最大の街・帯広(おびひろ)に、
体の状態に合わせた車を作ってくれる秘密基地があります。
その秘密基地は(有)イフ。
秘密基地というのはもちろん冗談で、至極まっとうで普通の会社なのですが(笑)、もう、かなり重い障害があっても運転できる車を、一から作ってくれる職人・内藤憲孝(ないとう のりたか)さんが経営していらっしゃいます。
でも、言いたくなっちゃうんです。秘密の基地って。
だって、その工場兼会社には、内藤さんが集めた…便利な福祉グッズがぎっしり!
・車の乗り降りを楽にする滑りの良い「移乗ボード」
・車に乗り降りする時の段差を緩やかにする補助階段
・車の必要な場所に、後付けできる様々な手すりから…
・車いすに乗ったまま助手席に乗り込める装置
・手動車いすをほんの数分で電動にする部品があると思えば…
・普通のドアを自動ドアに変えちゃう、車とは関係ない装置まで……!?
ね?これだけ聞いていたら、なんか秘密基地って言いたくなるの分かりますよね!
今列挙したのは、私が10年以上前に取材した時にあったものなので、きっと今はもっと色々なグッズがあるに違いありません。とにかく、最新の福祉系グッズを探すなら、イフさんに聞くのが一番早い!という会社です。
レーシングカーからの福祉車両職人 内藤さん
その内藤さんは、かつてレーシングカーを作っていらっしゃいました。
レーシングカーは、車の最高のポテンシャルを引き出すために、
ドライバーの体の条件や身体能力に合わせて作る究極の車(内藤さん談)
親御さんが体に障害があり、乗り降りしやすい車にしたい……と、考えた時に、
「なんだ、レーシングカーが作れるなら、自分で作れるじゃん!」と、会社を立ち上げられました。
何より、内藤さんを“職人”!と、思うのは、体のどの部分を障害されると、運転に関わるどのような操作に支障がでるかを熟知していて、ドライバー自身が分からない、具体的解決策を導き出してくれること。
・脳梗塞などで右足が麻痺した人には、左足でアクセルブレーキが操作できるように改造したり、
・脳神経系に障害があって、肘から下は自由に動かせないけど、二の腕の筋肉は使える人に対しは、手の平側に凸型の部品のついた手袋状のものを作り、それを、ハンドル側につけた凹型の部品にガチャン!とドッキングさせることで、腕の力で運転できるようにしたり、
・車いすから運転席への乗り降りをスムーズにできるよう、体が移乗する動作を見て、必要な軽くて丈夫なクッションを作ったり。
とにかく、体に障害があっても運転したい!運転して、好きなところに行きたい!という望みをなんとかしてかなえてくれる技術と知識がイフにはあるんです。
「改造」…というと、なんだか悪っぽいイメージがありますが、内藤さんは、
“実は、車は意外にいじれる部分が多く、申請が必要な改造もあるんですが、福祉車両としての改造には、申請が必要ない範囲も広いんです”とのこと。(申請が必要な場合は、イフさんが代行して行ってくれる)
内藤さんは、車を作りたいという障害がある人とディーラーに行き、改造する基となる車選びにも一緒に行ってくれたりもします。
「障害があっても、行きたいところに自由に自力で行きたい」という、人として当然の願いを実現してくれるイフさん。
車を“両親が乗り降りしやすいようにちょっと変えられないか?そんな、ささやかな事でも、ちょっと相談してみてはいかがでしょうか?
2019.9.13