ファイターズボールパークFヴィレッジへ想うこと vol.120
我らが北海道日本ハムファイターズが2023年にオープンする予定のボールパークエリアと新球場の正式名称を1月29日に発表しました。
ボールパークエリアが
「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE(北海道ボールパークFビレッジ)」
新球場が
「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコン フィールド HOKKAIDO)」
に!
↑こちらのwebサイトには、ワクワクするようなビジョンの数々がスタイリッシュに紹介されています。
駅前から球場へつながる「リビングストリート」、「森のマーケット」、「夏・冬のグランピング」、セグウェイなどで移動できる「モビリティタウン」などなど…
野球シーズンのみならず、四季を通じて様々な人が集い、北海道を丸ごと楽むパーク構想がうたわれています。
それは、これまで受動的だった“公園”というものの有りようや概念を一変させるような…アグレッシブに「行ってみたい!」と思わせる仕掛けがいっぱいです。
しかし、そうした壮大なレジャー的構想と一緒に…
いざという時には「避難所」としての役割を果たすというコンセプトを同じテンションで打ち出しているのには「ほぉぉ〜」と思いました。
たしかに、屋根のある広大な敷地に、温泉施設もあるよう訳ですから、まさに理想的。プライバシー保護のためのテントの設置も計画していると言います。
昨年、大きな被害を胆振東部にもたらした大地震、そして、それに付随して起こった北海道全域を巻き込んだブラックアウト…道民が経験した共通の記憶が生かされるのを頼もしく思いました。
そしてですね…や、は、り…こうした、これから創る「多くの人が集う空間作り」には、ぜひともバリアフリーやユニバーサルデザインの配慮をぴりりと効かせて頂きたい!
モビリティタウンに導入されるセグウェイは、いわば車いすの一種な訳ですから、車いす利用者にも便利な形が計画されるでしょうし、避難所構想の中に「お年寄りから子供のケア」を打ち出しているあたり、意識をしていることが伺えて期待大!
「大規模施設」だけに、作ってしまった後に「残念!」とならないよう、作る前に、様々な人の利用を考えての、「声」を生かしたシミュレーションをぜひお願いできたらと切に願う次第です。
公共施設における建物や設備のバリアフリー基準については「バリアフリー新法」という努力目標はありますが…
こうしたカタチのバリアフリーだけではなく、
私がかつて650本制作した番組取材で、障害がある当事者の方々から耳にした…大規模施設ができちゃった後に指摘される「残念なこと」についてちょっとまとめてみますと…
①「サインが少ない・わかりにくい」こと
広い敷地内のどこに何があるのか?いわゆる一般的なインフォメーションはもちろんですが、やや移動弱者に配慮した視点でサインを設置すると良いですね。
特に分かりにくいと後から指摘されるものの代表格は、「トイレ」と「エレベーター」「エスカレーター」。
札幌ドームでも、エレベーターの場所がとても分かりにくいと言う声をよく耳にしましたし、私自身、足の悪い母を連れて観戦した際は、探すのに苦労しました。
サインはまた、表示する高さと場所にもポイントがあり、あまり高い所にあると、子供やお年寄り、車いすなど視点が低い人には見つけにくい。
病院や昨今の駅にあるような、床に動線をず〜っとなぞるように線を引くのは、球場のような人混みの施設などで、どこに繋がっているのかが分かりにくいこともあります。
適度な高さ…地上から1〜2mあたりにあると、目に入りやすいようです。
②人のいるインフォメーションを入り口から近いところに。そして、その場所を示すサインは大きく目立つように。
人は、初めて訪れた場所に行った場合、まず自分が知りたい情報に辿り着くのが大変。さっさと動ける人はあちこち探し回れますが、歩くのがゆっくりだったり、身体に不自由がある人にとっては、「誰かが教えてくれる」のが一番です。
おそらく、近代的な施設になればなるほど、「モニター式の掲示板」などを多く設置すると思います。その文字も小さすぎない。
いえいえ、近代施設ですから、ひょっとして、“ペッパー”など、案内ロボットも投入されるかもしませんね。
しかし、やはり、情報のやりとりという面においては、人とのコミュニケーションに勝るものはありません!インフォメーションは、入り口に近く、そして目立つようにあると良いですね。
また、
③首里城方式〜客の困り事を察知し声をかけるスタッフ。ボランティアというよりエンジェルを配置。
これは以前「首里城〜やさしく人を迎え入れていた城」でも紹介しましたが、火災に遭う前の首里城には、琉球の民族衣装を着たり、スタッフジャンパーを着たスタッフが本当に公園内・城内の至る所にいらっしゃって、順路の案内他、何かあったら、「どうしました〜?」と、声をかける体制になっていました。
先の、トイレやエレベーターの場所なども、迷っていそうな人がいたら、積極的に声をかけて、案内する。
きちんとバリアフリー的サポート方法や心のバリアフリーを理解したスタッフで、聞かれるまで待つのではなく、「察知し行動する」エンジェルがたくさんいる施設は素敵です。
ボランティアではなく舞い降りるエンジェル。
札幌ドームでも、運営をサポートするボランティアスタッフを募集していたようですし、そうしたスタッフの中に障害がある当事者メンバーがいても良いかもしれません。地元の意欲溢れるシニアパワーを生かす手もあるでしょう。
JR札幌駅では、今、場内の掃除スタッフがやや積極的に「声がけ案内」する方法を実践し、効果をあげています。
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こうした大規模施設を作るには、建物・設備的な整備はもちろんですが、
やはり「置き去りにしない」体制を整えることが、一番の基本になると考えます。
北海道が誇る北海道日本ハムファイターズの新しいホームグラウンドが、ソフト的にも人的にも自慢できる、やさしくでっかく包み迎えてくれる施設になってくれることを心から願っています。
2020.2.3