vol.70 「逃げるバリアフリー」の先進地 沖縄
障害がある人の被害は健常者の2倍
台風19号の被害に関するニュースが連日報じられ、被災状況が分かるにつれ心が痛みます。
自然の力の前になすすべはないのでしょうか。
実は、日本有数の観光地・沖縄は、「逃げるバリアフリー」の先進地。
数年前から地元の消防、リゾートホテルなども参加・協力し、官民一体となって、幾度も「様々な障害に対応した避難訓練」の実験・検証が行われています。
呼びかけ人はNPO法人バリアフリーネットワーク会議の親川 修(おやかわ おさむ)さん。
親川さんは言います。
「観光地である沖縄県は“入り口”のバリアフリーは当たり前になってきているんですが、
いざという時の“出口”のバリアフリーはどうなっているのか?ということから実験を始めました。観光で訪れたくれた人達は
誰であっても、“必ず助ける”“必ず逃がす”という心構えで取り組んでいます。」
東日本大震災において犠牲になった方およそ2万人の内、65歳以上がその半数を占め、障害がある人の死亡率は健常者の2倍にのぼったというNHKの調査結果もあります。
身体障害の種類別に検証
しかし、高齢者と一言で言っても身体の状態は人それぞれ。また、障害がある人も、車いす、麻痺がある人、聴覚障害、視覚障害、知的障害…など様々で、障害に応じた避難のあり方をどのようにすべきか、検証が必要です。
その結果をバリアフリーネットワーク会議さんでは、「逃げるバリアフリーマニュアル」という本にまとめています。
例えば…
【視覚に障害がある人の緊急時の介助例】
介助者は、階段の踏み外しや倒れ込みに注意しながら、当事者のやや前方を後ろ向きに進む
【肢体不自由のある方の応急支援技術】
杖や車いすが破損した場合は、本人の了承を得て、毛布や担架を利用したり、幅広の紐などで背負って移動します
など、視覚、聴覚、内部障害、華麗に伴う障害がある方など8つの障害に分け、それぞれの障害特性や配慮などに触れ、写真などを交えながら解説しています。
もちろん、こうした方法は、読んで身につくものではなく、沖縄では、地元のリゾートホテルと協力し、あえて営業時間内に、他の宿泊客に「訓練」である趣旨を伝えて実施。
実際のホテル施設をつかって避難方法の検証、かかる時間、支援体制などの確認を回を重ねて行っているのです。
そうした訓練の結果を報告する会での、協力したリゾートホテル支配人さんの言葉が印象に残っています。
「こうした訓練を行うことで、私どものホテルでは、いざという時のための道具や装備、物資を準備をしておりました。実際に、空港が閉鎖されるほどの台風が来た時も、他のホテルが営業を停止する中で、私どもは、日頃訓練していることが自信となって冷静に対処でき、地域のお役に立つことができました。」
安心と安全は平等であるべきです。
しかし、いくらそう思っても、具体策を講じるには、実験と検証が不可欠です。
北海道ほか、観光地たる他の土地でも、沖縄に学ぶべきことは多いのではないでしょうか。
2019.10.15
“災害が起きたらいかにして逃げるか”