世界がまだ見ぬ“最新バリアフリー”ボールパークへの提案④〜 ユニバーサル空間演出編 no.129
ファイターズが北海道にやって来て17年。
ファイターズは、それまでにはなかったある文化を札幌にもたらし、根付かせてくれました。
それは、「劇場文化を楽しむ習慣」です。
それまでも厚生年金会館や教育文化会館など、いわば箱たる“劇場”はあったものの、
常設で、毎日、毎週、○日間連続などまとまった単位で行われる公演、スポーツがなかったところに、
ファイターズがやって来てくれた。
仕事を終え、そそくさと、サラリーマン達が背広を脱いてレプリカユニホームに着替え、大声で笑顔で家族や友達、仲間達と余暇を楽しむ。
本当に素晴らしい“文化”をファイターズはもたらしてくれました。
そして、再びファイターズは、日本中をあっと言わせるボールパークで、これまでになかったレジャーの概念を覆すような文化をもたらしてくれる予感にワクワクしています。
そんなファイターズだからできる、“新しい文化”の一つに、これまでにない規模で人々がファイターズ応援という共通の目的の元に融合するユニバーサル空間演出を提案したいと思います。
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2月17日にアップした当コラム「全盲の友人と一緒に楽しんだファイターズ観戦 no.124」でも、
全盲の友人重子さんと札幌ドームを訪れた時のことを書かせて頂きましたが、
全盲の人が客席にいる…ことに、周囲のお客さん達は、最初は正直不思議そうでした。
「見えないのに楽しめるの?」そんな声が聞こえて来そうでした。
そんな周囲の反応を、実は……私も重子さんも楽しんでました(笑)。
ヒットが飛び出す、ホームランで得点する度に、私が重子さんのメガホン叩いて一緒に喜んでいると、次第に、
隣の親子連れ、後ろのカップルも、重子さんのメガホンをポンポン叩いて一緒に応援するようになりました。
「耳にラジオ…そうか、聞きながらこの臨場感を楽しめるのね〜」
こうした納得が、心のバリアフリーが百歩進んだ瞬間なんです。
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現在の札幌ドームでも、車いすの人が観戦を楽しめるような配慮や工夫がされています。
車いすで乗れるエスカレーターもあります!
しかし、車いす席は一部に集められています。
もちろん、今のような配置でしたら、入場もしやすいですし、いざという時も安全であることは分かります。
しかし、一番の魅力である、「周囲と一体になって楽しむ」ようには残念ながらなっていません。
そこで提案なのですが、
スタジアムという構造上、階段で高低差をつけて客席を配置するのはしかたないとは思いますが、
たとえば、スタジアムの部分に、なだらかなスロープをジグザグ状に連続させて上り下りできるエリアを作り、
車いすの人も、足の悪い人も怖さを感じず上り下りできるようにしたり、
座席の一部を取り外せるようにすることで、車いすでも中に入り込める構造にすることはできないでしょうか。
また、車いすの人の中には、客席に乗り移って応援できる・したい人もいますので、
降りた車いすを畳んで近くに置いておく場所などがあればベター。
そういうエリアを一箇所にまとめてしまうのではなく、点在させるとより一体感を感じられるようになるでしょう。
スロープ状だといざという時、避難するのも便利です。
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これは、なにも障害がある人たちだけのためではなく、一般のお客さん達にとっても、
バリアフリーな気持ちや心に気づいてもらう大いなる発見となります。
いくら障害がある人達との接点のない一般社会で叫んでもできないことが、
スタジアムという「応援」という共通の目的がある、同じ楽しみを共有する空間だからこそできる…
ユニバーサルデザインな感覚を楽しみながら知る「人づくりの場」ともなるのです。
ボールパークは
そんな、さらに新しい、新感覚の文化醸成の場になってくれるポテンシャルも秘めていると思うのです。
2020.3.5