vol.66 お肉以上に極上な…絶妙なBF接客
ジンギスカンの名店
福島からラーメン旅に北海道を訪れた件(くだん)の半谷さんとジンギスカンを食べにでかけました。※半谷さんについては昨日の記事に詳しく!
札幌の都心部 狸小路にあるジンギスカン「アルコ」は、新鮮なマトンのジンギスカンをたべさせてくれる店として有名で、カウンター10席ほどの小さなお店。
ジンギスカンというと、普段はラム肉(生後1年未満の子羊の肉)が主流ですが、こちらはマトン(生後2年以上の成長したヒツジ肉)。
よく、ラムに比べてマトンは肉が固くて臭みも強いと言われていますが、こちらは、新鮮な肉を丁寧に手早く処理しているためか、固いなんてことはなく、むしろ味わいが濃くて美味しいのです。
そして、実は…こちらはあまり、いや、ほとんど知られていないのですが…バリアフリーのお店としても、屈指のクオリティを誇るお店なのです。
狸小路の表に面している「一徹」という、これまた人気のラーメン店の奥に位置していて、一徹ののれんがかかる入り口の左脇に細い通路があり、そこをとおってずずずい〜っと進むとアルコののれんがかかった入り口に達します。
その通路はしっかりコンクリート舗装され、少々斜めっていたりするもののフラット。入り口は、三枚扉になっていて、開口部が広く開くようになっています。
電動車いすで乗り付けた半谷さんは、ゆっくり歩けるので、入り口で車いすを降り、カウンター席へ移動。その時、お店の女性がさっと、何のてらいもなく、半谷さんの左脇を支えて席へ誘導してくれました。
聞くと、その女性には、車いすのご家族がいらして、つい「身体が動いてしまった」との言葉通り、実に慣れた対応。いきなりで、少々驚いた半谷さんですが、美しい女性に支えてもらい、なんともご満悦な様子(笑)。
席につくと、目の前に個別のコンロが据えてあり、1〜2人で一つのコンロを使って、自分で焼いて食べるスタイル。
メニューは「ジンギスカン(野菜付き)」のみ!あとはキムチや羊筋煮込みなど数種の小鉢と飲み物というシンプルさ。迷わず済むのがむしろ心地良い♪
お肉以上に極上な接客
と、ここまで書くと、普通のグルメリポートのようですが、ここのお店のクオリティの高いバリアフリーとは…
お店の人が「当たり前に堂々と障害がある客を扱う」ことに尽きます。
あ、お客さん車いす?歩けるんですね〜。じゃ、こちらに車いす置いて頂いて…こちらの席でね。はい、ご注文は?ひざ掛けが必要なら言ってくださいね。………それだけ。
車いすの人が来たーーー!と、構えることなく、空気がふつーーーー。
たまたま、今お店を仕切っている女性に車いすのご家族がいるようでしたが、実は、以前にいらした男性の店長さんもまったく同じ態度でした。
そもそも、このジンギスカン店は、手前にあるラーメン店「一徹」のオーナーが作った店で、そのラーメン店に、私の友人でもある車いすの佐藤友治君ほか、別の車いすのラーメン好き達が通っていました。
彼らは、多少の段差を上がることができることもあり、つっかかりながらも、店内に入れさえすればOK…とばかりに、通っていました。そして、トイレに行く時は、事前に調べておいた、近くの集合ビルのトイレを利用していたそうです。
するとある日、いつもと同じように、トイレを目指し、店を出ようとしたところ、
「あるよ。奥に。作っておいた」とオーナー。
なんと、それまで物置だったスペースに、手作りでバリアフリートイレを作っていたのだそうです。
佐藤君からその話を聞き、番組で取材に伺ったのは、もう15年以上前になります。
アルコも一徹も、ことさら「バリアフリー」とは一言もうたっていませんし、言われないと分からないほどさり気ない。
オーナーは、
「近くの別の店で飲んでて、トイレに入りたかったらいつでも来れば良いよ」とも言ってくれたと聞きました。
肉の美味しいことで有名な店は、極上のバリアフリーサービスを提供する店でした。
実は、この、店のスタッフのように、障害がある人に対し自然に振る舞うことは、
他のお客さんに対しても「障害がある人が特別ではない」空気を作り、
他の客が障害がある人を特別視する気持ちを作らせない効果があります。
極上の肉を食べさせてくれるジンギスカン「アルコ」は、その上質な肉以上に極上な…
「普通の空気感で対応してくれる店」なのです。
2019.10.9
※記事中の写真は、Smart Magazine Hokkaidoさんの記事から。
お店リポートについて詳しくはこちらをご覧下さい。
https://www.smartmagazine.jp/hokkaido/article/meal/5324/