vol.83 首里城〜多くの人を優しく迎え入れていた城

昨日の朝、投稿記事を書きはじめた4時頃、スマホがブルル…と、震えました。「NHKニュース防災:首里城で火災 ライブ映像配信中」という文字が目に飛び込んできました。ボヤ程度であってほしいと思いながら見ると、すでに真っ赤な炎が闇の中で燃えさかっていました…夢であってほしいと思いました。

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今年2月。 沖縄県那覇市で行われた「逃げるバリアフリー」フォーラム(NPO法人バリアフリーネットワーク会議主催)に出席した際、首里城を訪れました。

ゆいレール(モノレール)首里駅で降りて、緩やかな坂道を上ることおよそ15分。突如として現れた、そびえたつ石垣の迫力に息を飲んだのを鮮明に覚えています。

私は、「歓会門」から入るルートから入りましたが、フラットに正殿へ迎えるルートも。

首里城は本当に美しいお城でした。

そして、多くの人に優しい城でもありました。

首里城 正殿正面

首里城 正殿正面

昨晩のテレビで、先の復元作業に携わった方が「首里城には龍がたくさん描かれているが、その表情はどれも優しかった」とおっしゃっていましたが、たしかに、

正殿の正面に向かい合わせですっくと立っていた龍柱の表情も穏やかな威厳に満ちていました。

正殿前に立つ龍柱

 

 

石垣で囲まれた城へと通じる道は緩やかな坂道で、城の入り口付近の段差がある所には、同じ材質のスロープがあり、ベビーカーを押す人、車いすの人、旅行キャリーを持った人、皆が入っていけるようにもなっていました。

多くの人に優しくあったお城〜バリアフリーへの“方針”

正殿内に展示されていた柱の模型

正殿内に展示されていた正殿の柱模型

正殿の中に入ると、ほぼ正方形に組まれた格子状の柱が等間隔に並ぶ独特の建築洋式。所々に車いす用のリフトも見受けられました。

 

実は、普段は歩くが、旅行に行く時に車いすを使うという人は多いんです。

それは、旅行には「時間」がつきものだからです。

普段はゆっくりでよくても、時間に制約がある「旅」にはある程度の速度も必要。

そして、長い距離を移動するとなると…膝に痛みがあったり、早く歩くことが出来ない人は車いすを使った方が便利だからです。

訪れてみて、首里城をより「やさしく」感じたのは、そこで働くボランティアさん達の多さです。とにかくそこかしこに民族衣装やスタッフジャンパーを身につけたスタッフさんが居て、通路を誘導するだけはなく、

何かあったらすぐ人の力で手助けする体制になっていました。

首里城のある首里城公園には「バリアフリーコース」も設定されていましたが、しかし、「いかにもバリアフリー」とならないよう、周囲と調和させるよう工夫している様子もひしひし感じました。

実は、こうした歴史的建造物に、いくらバリアフリーにするためとはいえ、スロープやエレベーターをつけることには異論も多いのが事実です。

たしかに時代の雰囲気を損ねず、しかし、多くの人が訪れることができるようにするバリアフリー化は多くの観光地にとっての課題です。

しかし、首里城は、いかにも“スロープ”とならないよう、周囲と材質を揃えることで、違和感をなくし、しかし、どうしても…という段差の大きい所には、リフトをつける“決断”をしていました。

首里城は、「多くの人に訪れてもらうためすべきことはする」という方針に徹したのでしょう。

その荘厳なたたずまいであると同時に力強い優しさに溢れた城でした。

炎と共に天に昇華した龍が、再び地上に降り立つ日が近いことを祈ります。高いところから見下ろした首里城

2019.11.1

 

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