検証:専門家に「ボールパークへの提案」について伺ってみました !no.133
2月25日から6回に渡り、「世界がまだ見ぬ“最新バリアフリー”ボールパークへの提案」を書かせて頂きましたが、
今回、セルフ検証…ということで、
ユニバーサルデザインを研究されている専門家に記事を読んで頂き、ご感想を伺いました。
その専門家とは…
川内美彦(かわうち よしひこ)さん
アクセスコンサルタント・一級建築士・工学博士
元東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授
2000年「第一回ロン・メイス21世紀デザイン賞」受賞。
◆著 書
『ユニバーサル・デザインの仕組みをつくる スパイラルアップを実現するために』 学芸出版
『ユニバーサル・デザイン -バリアフリーへの問いかけ』 学芸出版 ほか
先生は、国のバリアフリー整備ガイドライン検討委員等を勤めるなど活躍されるなど
まさに日本におけるユニバーサルデザインの第一人者。
昨年、東洋大学を退官されましたが、1級建築士として、また車いすユーザー当事者として、いまだ活発にユニバーサルデザインの最新情報を発信しておられます。
先生には、かつて担当した番組を制作するにあたり、数々の貴重な助言を頂いたり、ご著書をバイブルのように使わせて頂くなど、大変お世話になり、今回の依頼を快くお引き受け頂き、感謝の言葉もございません。
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今日は、ボールパーク提案①〜駐車場編(https://barrierfree-front.jp/2020/02/25/toukou0225/)について頂いたご感想です。
提案概略:
駐車スペースをラージエリア(大型車用)とレギュラーエリア(普通乗用車用)に分けて設け、車いすドライバー車を、3ナンバーやRV車などの大型エリアに予約して停めてもらう
川内さん:
これはこれで面白いとは思いますが、そうなると現行法が足かせになりますね。多くの事業者では最低基準である法の要求を満たしているという理由で、それ以上の整備を避けようとする傾向がありますから。
事業者としてはできるだけたくさんの車を詰め込みたいわけで、この提案だと駐車場面積がかなり広くなります。また、レギュラー車がラージを予約したり、その逆だったりした場合、不正利用をどう防ぐかも問題になるのでは。
当日、開始前に洪水のようにやってくる車をその場で仕分けるのは困難でしょう。
ショッピングセンターで見ていると、多くの方の認識は、車いす対応が広いから停めるというよりも、高齢の人、障害のある人用だから停めるといった認識のようです。ですから決して広いスペースがいらない人でも、高齢の人だから、障害のある人だからといった理由で停めています。
人びとが秩序正しく使うことが前提となりますが、もしそうであれば、現行のやり方でもうまくいくはずなのですが。
と、いろいろ書きましたが、土地の広い北海道ならではの考え方なので、提案してみる価値はありそうですね。
協創UD:
ボールパークが、現行の札幌ドームの駐車場利用と同じく、試合やイベントのある時に駐車チケットを購入する方式なら、チケット販売規定の欄に、「エリア規定」として、「3ナンバー車やRV車、車いすドライバーなど」と、表記すれば、ある程度クリアできるのでは。
川内さん:
それと冒頭の「あれだけの大規模建築物であり、かぎりなく公共性も高い施設ですから、もちろん、バリアフリー法など、法律で義務づけられている基準は、建設・設計を手がける大手ゼネコンとも協力し、満たす準備はしているとのことでした。」というのが曲者で、
たとえばオリパラで注目されたサイトラインだとか車いす席の数などは法制化されていないので、実現される法的担保はありません。
バリアフリー法の罰則は、届け出をしなかったとか、命令に従わなかった場合についてのみで、アクセシビリティを整備しなかったことについてはありません。建築確認の段階できちんと押さえられるからではないかと思います。ただ、建築確認の段階で図面に入れていた整備をやっていなければ、使用禁止等のそれなりのペナルティはあります。
川内さんは、内閣府や厚労省などが取り組んでいるバリアフリー・ユニバーサルデザイン施策への提言をされてきただけに、的確なご指摘を頂き、心より感謝申し上げます。
バリアフリーやユニバーサルデザインは、作る側にとっては、収容客数、動線確保、安全面など、
長年「健常者目線・基準」で作られてきた規定の中で、それらバリアフリー・ユニバーサルデザインは、時代によりふって沸いたような「つけたすもの」であり、最低限守れば良い…という事業者の岩盤のような姿勢・スタンスと長年闘ってこられたこそのお言葉だと思いました。
通常の施設ならそれで良いかもしれません。
が、
ボールパークは今後10年、20年の北海道の新しい文化を作ってゆく施設。
超少子高齢社会問題、ダイバーシティ社会に向け、事業者自身が意欲を持って臨んで頂けたらと願わずにはいられません。
それだけに、双方にとって無理のない「最大公約数的バリアフリー」を提案できないか…と、協創UDでは考えています。
2020.3.23