ボールパーク提案検証③サイン、座席、人的サポートについて no.135

日本におけるユニバーサルデザインの第一人者で、

川内先生近影

川内美彦さん(かわうち よしひこ)さん アクセスコンサルタント・一級建築士・工学博士 元東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授 2000年「第一回ロン・メイス21世紀デザイン賞」受賞。 ◆著 書 『ユニバーサル・デザインの仕組みをつくる スパイラルアップを実現するために』学芸出版 『ユニバーサル・デザイン -バリアフリーへの問いかけ』学芸出版ほか (写真は東洋大学webサイトより)

昨年まで東洋大学 ライフデザイン学部 教授でいらしたアクセスコンサルタント川内美彦さんに、

ファイターズ ボールパーク Fヴィレッジへ提案した「最新ボールパークへの提案」について検証頂いたシリーズ最後は、

館内におけるサイン、心のバリアフリーノウハウを習得した人材教育と配置などについて。

各提案は、下記の通りで、クリック頂けたらそれぞれをご覧頂けます。

提案③〜 サイン・案内編 no.128

提案④〜 ユニバーサル空間演出編 no.129

提案⑤〜 心づくり編 no.130

提案⑥〜 人づくり編 no.131

視覚に障害がある人への対応について

川内さん:

3から6は重なる部分があるのでまとめてコメントします。

人的対応はご提案の通りですが、オリパラでも外部から案内カウンターまで誘導用ブロックで導き、そこから先は人的対応としています。

視覚障害のある人からは、各フロアを一周するコンコースにブロックを敷いてくれとの要望もありましたが、イベントで混んでいて、しかも慣れない通路を白杖で単独歩行できるかは疑問があります。それに場合によっては席の種別ごとにエリアが区切られている場合もあります。

人的対応の問題は、いったん席に座って介助スタッフが去った後、トイレや買い物に行きたいとなったとき、どうやって介助スタッフと連絡を取るかということです。

もちろんスマホを使うとかいろいろ方法はありますが、試行錯誤が必要そうです。

視覚障害のある人の観戦にラジオ放送は重要です。

ただファイターズ戦ならいいのですが、アマチュアの余り人気のない競技ではラジオ中継がないので、どうすればいいかよくわかりません。

もし視覚障害のある人が主催者に合理的配慮としてラジオ中継を求めた場合、過重な負担をどう考えるかということになります。

協創UD:

まずめったに、視覚に障害がある人が一人で観戦に訪れることはないでしょう。しかし、たしかに一人で来ても楽しめる…のは理想です。

ニューオータニイン札幌のHP

観光介助士の研修を受けたスタッフが対応

JR札幌駅近くにあるニューオータニ・イン札幌では、ブッフェスタイルの1階レストランで、

視覚障害がある人に点字メニューを用意したり、一緒に歩いて一つ一つ料理を説明しながら、お皿に取ってくれるサービスをしています。それは、連れの客がいても…です。そうすることで、連れ客に気遣いすることなく自分のペースで料理がとれると視覚に障害がある人に好評ですが、スタジアムでそれができるかは…そうした人員配置をマネジメントしようというサービス提供側の高度な意識が必要だなと思いました。

サインについて…

川内さん:

サインは目の高さというご指摘もありましたが、もちろん視覚の特性によってそのようなサインが求められる人もいますが、混雑している場合は人込みでそれに近づけない、あるいは気づかないということがあります。

高いの、低いの、遠いの、近いのと重層的なサイン計画が必要です。

それから、サインの専門家が常におっしゃるのは、空間がひどいのをサインでカバーするのはムリだし、本末転倒だということです。

有効なのは見通しが利くという空間計画だといわれています。

野球場はスコアボードがあったりしてわりとわかりやすいですが陸上競技場とかサッカー場ではフィールドそのものは前後左右が分かりにくくなるので、自分がどこのエリアにいるかを認識しやすくする設計が必要です。

協創UD:

「空間の不備をサインでカバーするのは無理」というのは、おおいに納得しました!

たしかに、野球場の場合は、スコアボートがどこからみても分かる分、方向を定めやすく、いる場所を確認しやすい空間なのだなということを改めて認識しました。

車いす席設置の課題〜事業者のスタンス

川内さん:

車いす席等についてのご提案はオリパラ競技場ですでに行われていますが、

問題なのは法律に反映されていないので、そうすることはあくまでも施主の任意だということです。

国の姿勢が私には理解できません

客席を横切るようなスロープのご提案は、公園などのゆったりした階段では実例がありますが、スタジアムの観客席のような急こう配ではまず無理です。

サイトラインを確保した車いす席を一つ作るには一般席を7から10席つぶさなければなりません。

これから考えても、急こう配の席にスロープを入れることは、事業主にとっては大きな損失になりますし、客席を延々と渦巻き状に何周も巻いていかなければならないので物理的にも無理だと思います。

協創UD:

キタラの客席 俯瞰

札幌コンサートホールKitaraの客席。ワイン棚が重なるように配置されている

キタラの客席見とり図なんとか、そうした席を潰さずにサイトラインを確保するカタチというものを考えられものでしょうか…。建築設計の知識がないところで妄想するしかないのですが…例えば、札幌 中島公園にあるコンサートホールKitara 大ホール客席は、ワインヤード方式という客席スタイルで、客席が、ぶどう棚のように、いくつものブロックを重ねるよう配置されています。このブロックの中は緩やかなスロープで動けるようにするとか…

 

 

 

 

川内さん:

まあ、競争心をあおるなら、マツダスタジアムを超えるものを、とか、

新国立等のオリパラ施設を経験した観客は目が肥えていて、それ以上をめざさないとがっかりさせるだけですよ、とか少々挑発を含めて提案する手もあるかもしれないですね(笑)。

協創UD:

たしかに、マツダスタジアムは、ちょっと調べるとなかなかなバリアフリー的配慮がされているようです。次回、詳しくご紹介します!

2020.3.30

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