vol.37 マイノリティの心細さ〜旅先での収穫
ジロジロみられる…なぜ!?
4年ほど前の秋彼岸の頃、人生初の九州旅行にでかけました。
出発の朝、天気予報を見ると当地福岡は30℃越え。
北海道は、すでに肌寒くなり始めた頃でもあり、私は着納めとばかりに張り切ってノースリーブを着て飛び立ちました。
到着した博多は、日が沈んだ後も汗ばむ気温。早速、名物の屋台に繰り出そうと街へ出た。が、間もなく「ん?」。
すれ違った年配の女性に、私の肩の辺りをジロリと見られた。不思議に思って間もなく「んん?」またである。
それからも、道行く人 何人もにジロジロ見られる…これはどういうこと!?
ふと見ると、福岡の人々は皆すでに半袖もしくは、長袖だ。30℃を越えていても…ノースリーブは私だけ!?
私は慌てて、バッグの底にクーラー対策のために突っ込んでおいた薄手のカーディガンを羽織りました。
マイノリティの側になって気づく心細さ
……思えば、北海道民も、春一番が吹いた途端に、まだ気温が低かろうと、雪がチラつこうと、服を冬物から春物へがらりと変える。それこそ道民の矜持であり、ダウンジャケット姿の人を見ようものなら「道外から来た人ね」と、意味のない優越感を抱いたりも。
その逆のシチュエーションに、私は九州で遭遇した…という訳です。
なるほど、所変わればである。と、感心しつつ………
次の瞬間、私は心の中で、虫取り網を振り下ろした。
捕まえたのは、「異文化な中で感じるなんとも落ち着かない心細い気持ち」。
障害がない人がある人の気持ちを慮るのは難しい…と昨日書きましたが、
周囲と同じつもりなのに、何も違いはないつもりなのに、突如、自分だけ異質視される…マイノリティの側にたった時に感じるなんとも言えないその心細さ…その肌感覚を覚えておきたいと思ったのです。
思いがけないささやかな気づきの収穫があった旅の思い出でした。
2019.8.29
*2014年北海道新聞「朝の食卓」に寄稿した記事に一部加筆致しました。